夕刊フジ 2008年2月28日(木)
 

神内治の「新大化け前の 関西中小企業」
ハイトカルチャ
「宇宙で植物栽培」夢じゃない

 倒しても逆さにしても中身がこぼれない、水だけで育つ机上用観葉植物を商品化。植物栽培のベンチャー企業が開発した独自のセラミック栽培技術は、宇宙空間での植物栽培も可能にする。

 小さな丸いアクリル容器に、ミニサイズの観葉植物が差し込まれている。用意の中に入っているのは水だけ。そのまま机の上などに置いておいておよそ2カ月、夏場でも2カ月はもつという。水が少くなれば、水道水を足してやればいい。
 秘密は、容器の口にはめ込まれたプラスチックのキャップの内側、観葉植物を差したパイプにある。高温焼成した特殊セラミック製。その微細な空隙を通じ、毛細管現象によって、植物の根が生育に必要な水分を吸収する。
 商品名「セラハイトアース」。開発したハイトカルチャ(西忍社長)は、希望小売価格1260円(税込み、植物は6種類)で、3月から全国の雑貨・家具売り場などで売り出す。先行商品にキャップが木栓で、ガラス瓶の中に飾りのビー玉を入れた「セラハイト玉ビン」があり、2004年から大手雑貨店で販売、年間3〜4万個が売れている。同社では両商品を合わせ、20万個の販売が目標だという。
 ハイトカルチャは、バイオテクノロジー・緑化技術のベンチャー企業。セラハイトの原理となったセラミック植物栽培技術(ハイトセラミックス)は、同社が独自に開発したものだ。「観葉植物だけでなく、野菜でも米でも、あらゆる植物の栽培が可能」だと、開発を主導した木下明取締役開発本部長(59)は説明する。
 「閉ざされた空間で、野菜をきわめて効率よく、しかも大量に育てることができます。しかも、土は植物の成長を助けますが、セラミック自体が植物に与えるものはありません。だから、植物を育てる上で、いろんな実験ができる。与えたものによって植物にどんな影響が出るか、明確にわかるのです」
 ハイトセラミックスは、世界18カ国で特許を取得。クリーンルームによる室内観葉植物の生産・販売について、国内外で特許権契約を行っているほか、実験用基材としてのセラミックシステムの提供、完全閉鎖型植物栽培工場のプランニングなどを展開中だ。
 さらに、その可能性は地球上だけにとどまらない。宇宙の無重力空間で植物を育てるには根に直接養水分を供給しなくてはならないが、ハイトセラミックスなら、養水分が毛管力によって移動するため、重力方向に影響されることなく、植物に直接供給することができる。宇宙ステーションの中で植物を育てることも、やがて夢ではなくなる。
 同社の前身は、ポットによる植物のコンテナ栽培を行う会社。京都大学農学部の赤井龍男助教授(当時、現在は同社会長)と共同で、苗木の成長を早め、風や強い日差し、野生動物の外から守る保護用の筒(ツリーシェルター)を開発、「ヘキサチューブ」の名で商品化したことを契機に、新たな会社、ハイトカルチャとして1996年4月にスタートした。ヘキサチューブは、国内の森林再生のほか、ヒマラヤやアフリカで乾燥した大地の緑化に大きく貢献している。
 産学連携で生み出された技術の種は、根を生やし、やがて1本の苗木から緑豊かな森林へと育っていくはずだ。